これから入院生活を送るご家族の方へ
仕事
他の人は仕事、どうしてるの?
がんの診断を受けたお子さまのお母さまを対象とした調査1)では、診断時に働いていたお母さまの75%は、お子さまの入院に付き添うためにお仕事を退職または休職していました。お仕事を退職または休職する割合はお父さまよりもお母さまが多くなっています2)が、お父さまも他のお子さまの育児や家事を担うため、残業・出張の免除を申請したり、在宅ワークに切り替えたりと職場と調整して働き方を変えていました。
お子さまの入院中に仕事を続けられたお母さまは、院内学級などでお子さまが学習する時間や治療の合間にご自宅に外泊される期間にお仕事をしていました。病院内でお仕事をする場合、インターネットに繋がなくてもパソコンで作業できる仕事や機密情報を含まないデータにして作業を行うなど職場の方と調整をしているようです。病院内でお仕事をする場合、仕事をするスペースが病院内にあるか、通話やインターネット接続が可能か看護師にご確認ください。
お子さまのご病気の診断に大変驚かれたと思います。入院した時点では治療、入院期間がはっきりとわからない場合もあるでしょう。可能であれば、まずは数日お休みをとり、今後の治療のスケジュールや生活のリズムがわかった後、治療終了後の生活も見据えて、お仕事をどのようにされるか考えられるとことをお勧め致します。
入院期間が長いけど、仕事を休むことはできるの?
小児がんの治療は、疾患により異なりますが、数ヶ月から約1年に及ぶ入院が必要な場合がほとんどです。白血病の場合、入院での治療終了後も治療のため2週間に1回程度の外来通院が必要なケースもあります。残念ながら、現在の制度(表)では、お子さまの入院、治療期間をカバーすることは難しい場合が多くなっています。お子さまの入院中にお仕事をお休みしていたお母さまの中には、介護休業と年次有給休暇、お勤め先の会社独自の有給の積み立て制度、そして欠勤など、いくつかの制度をつなぎ合わせながら休職している方がいらっしゃいました。また、育児休業中のお母さまは、育児休業を延長されていました。
お勤めの職場にどのような制度があるか、ご自身が各制度の対象となるかは、職場の就業規則をご確認ください。就業規則をどこで確認するとよいかわからない場合は、人事や総務担当者にお問合せすると確認できます。また、介護休暇と子の看護休暇は、職場により有給か無給かの扱いは異なります。これらの制度がある場合は、休暇中の賃金の支払いについても就業規則で確認するとよいでしょう。介護休業中は介護休業給付金を受給できる可能性があります。人事や総務担当者、ハローワークで確認するとよいでしょう。
職場に休職できる制度がない、または制度があっても制度の対象外の場合もあります。そのような場合でも、職場の配慮によりお子さまの入院中も仕事を継続することができたり、治療終了後に復職できた方がいました。お子さまの治療終了後も含めて、お仕事をどのようにされるか職場の方と相談することをお勧め致します。休職をご検討の際は、職場の方と相談するに際し、治療のスケジュールや治療期間、自宅への外泊の時期などの今後の見通しを事前に医師に確認しておくとよいでしょう。今後の見通しがわからない場合は、どのようなタイミングで見通しがわかるようになるか確認すると、職場と調整がしやすいと思います。入院中や外泊時の生活については看護師にお尋ねください。
自分の仕事をどうしたらいいか、誰に相談したらいいの?
まずは、お子さまの入院先のソーシャルワーカーに相談してはいかがでしょうか。仕事だけでなく、治療や療養生活に対する経済的支援に関しても情報を得られるでしょう。お子さまの入院先で相談することが難しい場合は、がん診療連携拠点病院、小児がん拠点病院、地域がん診療病院に設置されている「がん相談支援センター」で相談することができます。全国どこからでも匿名、無料で、電話でも面談でも相談できます。また、公益財団法人がんの子どもを守る会でも、ソーシャルワーカーが小児がんのお子さまとそのご家族の療養生活に関するご相談に応じています。
特に仕事に関しては、社会保険労務士(以下、社労士)に相談することをお勧め致します。病院によっては、社労士が定期的な相談会や相談者のご希望日時に応じて相談を行なっている場合があります。また、公益財団法人日本対がん協会では、社労士による無料の電話相談を受け付けています。
引用文献
1) Okada H, Irie W, Sugahara A, et al. Factors associated with employment status among mothers of survivors of childhood cancer: a cross-sectional study. Support Care Cancer. 2023 Feb 14;31(3):168. doi: 10.1007/s00520-023-07623-8. PMID: 36781507.
2) 入江亘,塩飽仁,鈴木祐子,他.慢性疾患を抱える子どもをもつ親の就労実態および健康関連QoL(Quality of Life)との関連.北日本看護学会誌 2018;21(1):1-11.
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こちらも参考になるかもしれません(外部リンク)
- 国立がん研究センター がん情報サービス がん相談支援センター
- 患者さん向けとなっていますが、ご家族にも役立つ内容が多く含まれています。冊子としてダウンロードすることも可能です。
- 公益財団法人 がんの子どもを守る会
- 病気や療養生活について相談をしたり,情報を得ることができます。ご家族向けの様々な冊子も提供しています。
- 公益財団法人日本対がん協会
- がん相談ホットラインや,社会労務士によるがんと就労の電話相談を受けることができます(要予約)